山村年子は、山本伸一を一瞥し、鼻先で笑うようにして尋ねた。
「では、お聞きしますけど、御本尊というのは紙ですよね。紙に字が書いてあるだけのものに、なぜ、そんなに力があるんですか」
伸一は、真心を込めて語っていった。
「紙でも、大きな力をもっているではありませんか。五万円、十万円の小切手を、『これは紙だ』と言って、捨てますか。届いた電報に『ハハキトク』とあったら、紙の文字でも、平気ではいられなくなるでしょう。
地図も紙です。正しい地図を信じて歩みを運べば、目的地に行けるではありませんか。幸福を確立する生命の力を開くための、信仰の根本となる対象が御本尊なんです」
彼は、多くの例を挙げて訴えていった。
愚人は御本尊を紙と見る、賢人は仏と見る、と言えますね。
劇画人間革命(52) |
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